今でも人を呪う「犬神」という憑き物。その悲しい生い立ちと怖い話

犬神 怖い話

昔の因習や怖い話のなかでまことしとやかに話される「犬神」

ある一定の地域では今もとても恐れられる存在です。

どうして犬神が生まれたのか、どうして恐れられているのか。未だにその原因は分かっていません。

今回は怖い話として有名な「犬神」の謎にせまります。

犬神とはどんな存在なのか。怖がられる理由とは

犬神 呪い

犬神は人や家に住み着き、人に災いを起こしたり呪ったりする「憑き物」といわれています。

西日本に最も広く伝承されており、特に中国・四国・九州地方でとても有名です。

また沖縄や屋久島、種子島まで広がる分布圏を持ちます。

ただ四国を中心とした地域で「犬神」が憑き物の王となった理由を説明するのは、わかっていません。

四国地方には狐が生息していない(真偽不明)から、犬が代わりになったという説とともに、殺した犬で呪詛を行った家が犬神筋となったという伝承も伝わっています。

「憑き物」の中でも殺した犬で呪詛を行う蠱術との関連性が強いのが「犬神」の特徴とも言えます。

そのせいか「犬神」に取りつかれると気が荒くなり、その人は体の痛みを訴え奇矯な行動をし、動物のように這い回ったり犬のような声で吼えたり唸ったりすると言われていました。

実際にそのような状態に陥った人を見たり聞いたりした体験談が、現代においても多く語られています。

犬神の憑き物筋と呪い

犬神には「犬神持ち」「犬神の家筋」という言葉があります。

犬神に限らず、日本におけるいわゆる「憑き物」は共通した特徴を持っています。

人や個人ではなくむしろ家、一族、血筋に棲みつく=憑くのです。

そしてその犬神憑きの家の者が命じて、嫌いな相手を犬神に呪わせたり殺させたりしたと言われています。

また犬神憑きの家系は犬神に憑いてもらっているがゆえに、とても栄えたとも信じられていたのです。

昔の閉鎖的な社会が憑き物筋を生んだ

犬神と因習

この「○○筋」という呼び名が語られるようになるのが主に江戸時代以降であり、筋の家の多くが、土地に対する移住者でありながら総じて富裕であったことが、民俗学や社会学の研究によってわかっています。

つまり自分たちにはわからない理由で財を成していたり、技術や知識を持っていたりするよそ者に対して「霊や動物を使役して他人から財産を盗み取っているに違いない」という疑いと恐れがあったのです。

悲しいことですが、日本の農村社会の閉鎖的な環境において、共同体が安心して暮らしていくために、異分子を差別し排除するための合理的な理由が必要でした。

「憑き物持ち」「家筋」といった呼び習わしは、こうして形成されていったものと考えられ、明らかな地域性をもって、「犬神」「クダ」「ヤコ」「オサキ」「イヅナ」「スイカズラ」といった多様な「憑き物」が伝承されています。

犬神は人間の手で作られていた。悲しい話

犬神は人の手によって遠い昔に作られたともいわれています。

Wikiペディアにもこのような記述があります。

飢餓状態の犬の首を打ちおとし、さらにそれを辻道に埋め、人々が頭上を往来することで怨念の増した霊を呪物として使う方法が知られる。

また、犬を頭部のみを出して生き埋めにし、または支柱につなぎ、その前に食物を見せて置き、餓死しようとするときにその頸を切ると、頭部は飛んで食物に食いつき、これを焼いて骨とし、器に入れて祀る。すると永久にその人に憑き、願望を成就させる。

獰猛な数匹の犬を戦い合わせ、勝ち残った1匹に魚を与え、その犬の頭を切り落とし、残った魚を食べるという方法もある

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/犬神

まさに真言立川流でどくろ本尊が教義の中心だったように、犬や虫など特定の生物を霊的に使役する蠱術においては、生きながら切断した首が呪いの対象とされたのです。

犬神はどんな姿をしているのか

犬神の姿

江戸末期に活躍した国学者・岡熊臣(おかくまおみ)が書き残した博物書『塵埃(じんあい)』に描かれた犬神の姿は、体長1尺1寸(約33センチ)の蝙蝠に似た姿でした。

この描写と呼応するように、犬神について伝えてきた西日本各地におけるその姿は、

”大き目のネズミ”” ”モグラの一種”” ”ハツカネズミやジネズミに似ている”” ”白黒まだらのイタチのよう”

などと伝えられており、一定の共通した姿かたちを連想させます。

口先の尖った小動物のような外見をして、旧家に棲みついた一群れであり、時に列を成して家内を動き回り、見える人の前には姿を見せる、そんな姿です。

一方、江戸初期の僧で仮名草子作家でもあった浅井了意が『御伽婢子(おとぎぼうこ)』において記した土佐(今の高知県地方)の犬神は、黒・白・斑といった色をした米粒ほどの姿をしており、高知を舞台とした映画『狗神』で表現されたのも、この小さな犬神でした。

犬神の怖い話

漫画家の永久保貴一は、その著書『永久保怪談 恐怖耳袋①』において、ある学生から聞いた話として、「犬神筋」の家に取材に行って憑かれた男子学生たちが経験した怪異と恐怖を描写しており、彼らは人に知られるのを嫌っているようだと分析しました。

文字や画に起こすだけでも怪異があるとも。

映画にもなった犬神

2014年に亡くなった作家・坂東真砂子が1996年に角川書店から発表した小説『狗神』(いぬがみ)。

作者自身の出身地でもある四国の高知県を舞台に、実在の民俗伝承をモチーフとして因習因果の果てに起こる惨劇を描き、2001年には天海祐希主演で映画も公開されました。

日本は犬を神様として祀っている神社がある

日本には、埼玉県秩父市の三峰神社や東京都青梅市の武蔵御岳神社など、犬を神として祀る神社が多く存在します。

しかしこれらの信仰における「犬」とは「ヤマイヌ」=「狼」のことと考えられ、「犬神」ではなく「大神(オオカミ)」であり、憑き物筋の犬神とは無関係です。

犬神憑き・まとめ

閉ざされた共同体での妬みや嫉妬から生まれた「犬神という憑き物」。

ある一定の容姿を持ち、時代を超えて多くの人々に目撃され、説明のつかない恐怖とともに存在し続けています。

それこそが紛れもない事実といえるでしょう。