【Netflix】ホールド・ザ・ダーク そこにある闇 総評・ネタバレあらすじ

ホールド・ザ・ダーク-そこにある闇 Netflix(ネットフリックス)

ジャンルはミステリーになるのでしょうか。じっくり集中して映画を観て、しっかりと考えるのが好きな社会派のあなたには、絶対におすすめできる作品です。

舞台はアメリカ合衆国の北の果て、雪に閉ざされた道なき荒野、アラスカ。
粗末な家の先住民(インディアン)と、都会から来た腰掛けの白人警官たち。
強く美しい狼の群れ。
ある理由で呼び寄せられた黒人作家。

この設定だけで、残酷な寓話のニオイがプンプンします。

少ないセリフと何気ないカットの全てが「ほのめかし」であり、伏線でもあります。

何かが断定的に説明されることは皆無です。あらすじさえも個人の解釈の域を出ません。

しかし何度も繰り返しみて、解釈を深める余地のある良作です。

【Netflix】ホールド・ザ・ダーク そこにある闇 作品紹介

Hold The Dark | Official Trailer [HD] | Netflix

■あらすじ
オオカミに息子をさらわれたと言う母親の依頼で、アラスカの辺ぴな村を訪れた作家。だが、動物行動学の知識を生かした人助けが不気味な謎に包まれる恐怖に変わる。

■出演
監督
ジェレミー・ソウルニエ
脚本
メーコン・ブレア/ウィリアム・ジラルディ
出演者
ライリー・キーオ/アレクサンダー・スカルスガルド/ジェームズ・バッジ・デール/ジェフリー・ライト/ジョナサン・ホワイトセル/メーコン・ブレア/エリック・キーンリーサイド/ジュリアン・ブラック・アンテロープ/ジェームス・ブロアー/ライアン・アーヴィング

■動画配信
Netflix(ネットフリックス)

【Netflix】ホールド・ザ・ダーク そこにある闇 ネタバレを含むあらすじ

(以下、ネタバレを含むあらすじです。見たくない方は飛ばしてください。長いです)
**************
作家のコアは、彼の著書を読んだという見ず知らずの女性、メドラ・スローンからの奇妙な依頼に応え、アラスカ州の先住民居住地・キールット集落を訪れます。

コアは狼の研究家で、子供をさらった狼をやむなく撃ち殺した経験をもっており、メドラ・スローンから息子(ベイリー)をさらった狼を探し出して殺してほしいと依頼されます。

メドラは金髪で碧眼の美しい女性で、先住民には見えない容姿の若い女でした。

この居住地の生まれで、夫は中東へ出征中の軍人で幼馴染だと話します。

この暮らししか知らず、漫然と生きているが、唯一、山の洞窟で見つけた温泉が好きで、「汚れを落とす場所」だとも話しました。

狼の探索に出発したコアは偶然、メドラの「温泉」を見つけます。

出会った狼の群れは、野生の世界ではよくある「子殺し」の最中で、コアを襲うことはありませんでした。

そのあとメドラの家に戻ると、彼女の姿も車もなく、コアは地下室に隠された男児の絞殺死体を見つけます。

その頃、メドラの夫・バーノンは冷静さと厳格さを持ち合わせた優秀な軍人で、流れ弾で負傷し、急遽帰国することになっていました。

バーノンも美しい金髪の美丈夫です。

キールットへの帰郷と同時に、ベイリー殺害とメドラの嫌疑を知ったバーノンは、隣家の親しい友人・チーオンの助けで警官2人と検視医を射殺して捜査資料を奪い、ベイリーの遺体を雪に隠して逃走します。

メドラの行方を探し、バーノンは彼女が立ち寄ったと思われる“先住民の魔女”と“インディアンの猟師”を訪れます。

魔女と猟師の口から、狼が悪と災厄の象徴であり、その化身であるメドラとバーノンは先住民社会においてすら忌み嫌われる存在で、排除の対象であったことを聞かされ、怒りからバーノンはさらに死体の数を増やしていきます。

一方、チーオンは、長年にわたる人種的な不平等や失踪した娘を捜索しなかった警察に対し、鬱屈した不満を募らせていました。

警察のバーノン追跡を封じるため、チーオンはキールット集落で銃撃戦を始め、なす術のない若く軟弱な白人警官たちを大量に殺害した末に、チーオンは撃たれ息絶えました。

銃撃戦を生き延びたコアと、バーノンをとく知る警察のドナルドは、メドラは「温泉」に隠れており、バーノンも「温泉」を目指すはずと推論し探索にいきます。

そこにバーノンが現れ、ドナルドはたおされ、コアも矢で射られて負傷します。

やはりメドラは「温泉」にいて、ベイリーを殺害したのもメドラだったのです。

バーノンは愛と怒りに激しく葛藤した末にメドラを許します。

何事もなかったように、金髪のふたりはコアを残して「温泉」を去り、掘り出したベイリーの棺を引いて何処かへと消えていきました。

矢傷で瀕死の状態のコアは、以前に遭遇した狼の群れと出くわすのですが、狼たちはなぜか彼を見逃して生かすのです。
****************

【Netflix】ホールド・ザ・ダーク そこにある闇の感想 ヒリヒリする社会の闇を感じる問題作

この映画を観たことで、アラスカ州が実は先住民社会であることを知りました。

モチーフになっているのは、朝は10時にならなければ明るくならず、昼は15時になれば真っ暗になるような厳寒の地、最近になってようやく水道や電気が通ったほど貧しく、住人のほぼ全てに犯罪歴があるような、絶望的に閉鎖的な先住民居住地です。

暗く、狭く、貧しく、迷信に満ちた集落に、たったひとり(ふたり)、金髪碧眼の子供が生まれます。

そもそも白人から差別されているような狭い居住地で、鬱々と地を這うように受け継がれた二重の差別。

太古から共存しつつも畏れ、憎んできた狼を思わせる容貌のために、産み落とした親からさえも差別され、ヒリヒリと虐げられ、呪詛されて不条理を感じながら育ちました。

メドラとバーノンが自らすすんで狼になろうとした気持ちは、想像できます。

またメドラ・バーノン・ベイリーの容姿の稀有な共通性・純粋性は、メドラとバーノンが実の兄妹であることを暗示しています。

メドラの「子殺し」は、集落内差別からのストレスとプレッシャーだけではなく、呪われた自分とバーノンの血の断絶をはかったものだったと思うのです。

集落の中でマジョリティであれば幸福か。
答えはノーです。

チーオンの娘は本当に狼にさらわれたのか。
おそらく、この答えもノーでしょう。

娘の失踪の理由さえ、答えを見つけてもらえないほど、居住地は白人社会から軽んじられ、無視されているのです。

集落の内にも外にも、幸福も安らぎも無い。

だから、バーノンはベイリーを殺めたメドラを許し、狼のつがいとして旅立つことを選んだのだと思います。

太古から人類は、こんなふうにアダムとイブを旅立たせ、結果、地球上にあまねく広がっていったのかもしれません。